ナレーター 事務所の秘密を探して

この人は、本に書いてある文体、つまり書きことば「である」調で原稿をつくっていたからである。 さっそくホテルへ帰って、「です」「ます」に変えたそうである。
こんな例を引き合いに出さなくても、日本語のダブル・スタンダードはいまなお画然としている。 ただ、多くの人は、そう感じないのである。

語尾だけの問題ではない。 漢語とやまとことばが混用されているために、わかりにくかったり、誤解したりする。
同じこうがいでも、辞書を見ると、口外口蓋公害光害後害郊外校外梗概港外鉱害懐慨構外などがならんでいる。 こうがいときいただけでは、このうちのどのこうがいなのか、話の前後から推測、判断するしかない。
常識ある人なら、それができるはずだが、日ごろそんなことを考えていないために混乱をおこす。

日本語の言文一致ということで、いちばん進んでいるのは、手紙の文章である。
ほとんど「です」「ます」の話しことばが使われる。 いくら変わった人でも、私信で「……である」などとは書かない。
完全に話しことばではないが、まずそれに近いことばが用いられている。 日本語のダブル・スタンダードは、手紙文によって一部だが、解消しようとしている。
そのように考えれば、手紙の中で、むやみと難しい漢語を多用するのはおもしろくないことははっきりしている。 なるべく漢字をすぐなくする。
日本語は漢字まじりの仮名文が標準となっていて、ダブル・スタンダードを容認しているが、手紙では、なるべく漢語を用いないほうが、やわらか味もある。 硬い調子は冷たい感じである。

パソコンが普及してから、また漢字が多くなってきて、かなのほうがのぞましい「しかし」「たしかに」などのことばまで、「然し」「確かに」と書く人がふえた。

ただ漢字がすぐないと、文章が読みにくくなるおそれがある。 それをさけるには、読点(、)をうまく使うことである。 ある女性が、「おもしろいですね」といった。 この人、外国人に日本語を個人教授しているのである。 月末になると、めいめいが月謝をもってくる。 欧米系、アジア系とさまざまな生徒がいるが、みんな、お金をむき出しにして突き出すから、はじめのうちはずいぶん、いやな思いをしたそうだ。 ただ、例外は台湾から来ている人で、ちゃんと紙に包んだり、封筒に入れたりしてもってくる。

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